シックハウス症候群が悪霊の正体?健康被害をもたらす化学物質が怖い

シックハウス症候群が悪霊の正体?健康被害をもたらす化学物質が怖い 不動産
相談者
相談者

私たち夫婦は1年前、新築マンションのこの部屋を購入しました。それが恐怖体験の始まりでした。

入居してから数週間、私は時々息苦しくなることがありました。それから、頭痛や吐き気がしたり、じんましんが出たり、ゴホッ……。日に日にダルくなって、言い知れぬ不安に襲われるんですよ。フッと目の前が真っ暗になったときは「もうダメだ」と思いました。そろそろ限界です。ここに入居する前は、こんなことなかったのに、ゴホゴホッ……。

最近は夫も「ここで寝起きすると、かえって疲れる」って言ってます。

この部屋は呪われてるんです!悪霊が憑いているんですよ、きっと!お祓いしないと、私たち夫婦は呪いから解放されません!

こんな恐ろしい部屋を売りつけた不動産屋が許せません!ゴホゴホッ……

相談者の住んでいる部屋は、悪霊が憑いているんじゃないと思いますよ。

相談者の話を聞く限り、典型的なシックハウス症候群です。つまり、欠陥住宅を買ってしまったってことです。

そんな相談者は、不動産会社の不法行為責任を追及できるんでしょうか?

シックハウス症候群は化学物質によって引き起こされる

シックハウス症候群とは、室内の建材や家具などから漂ってくる化学物質を吸ったり浴びたりすることで健康を害することです。

目や鼻、喉の粘膜がやられたり、肌荒れやじんましんが出たり、息苦しくなったりといった肉体的な被害だけでなく、全身がダルくなったり情緒不安定になったりもします。

「この部屋は呪われてる!」な~んて疑い始めるのも、シックハウス症候群が原因で思考力が低下しているからなのかもしれませんよ。悪霊の正体は化学物質!

最近の家は、接着剤や合板などに有害な化学物質が使われています。一方で、気密性や断熱性を重視した部屋では空気の出入りが少ないため、室内に化学物質が充満して……。これじゃあ、シックハウス症候群になる人が増えちゃいますよ。

シックハウス症候群が悪化すると、空気中に漂っている低濃度の化学物質に体が過剰反応する化学物質過敏症になっちゃうことも多いといわれます。化学物質過敏症にかかると、外を歩くだけでも辛くなるので、心身共に疲れ切って社会生活を送るのが困難になります。

ホルムアルデヒドとクロルピリホスを規制する建築基準法

欧米では1983年から「シックビルディング症候群」として認知されていました。一方、日本では、1994年ごろからマスコミに取り上げられるようになって、よーやく知られるようになりました。さらに2004年4月からは、シックハウス症候群にも健康保険の適用がスタートしました。

「欧米で社会問題に→日本のマスコミが騒ぐ→国が制度を整える」というサイクルの日本では、次の段階に行くのに10年かかるんですよね。クッソ下らないカジノ法案みたいなのは強行採決であっという間に決まるのに、本当に大切な法制度はなかなか決まらないっていう、これぞまさに“美しい国、日本”!

もっとも、シックハウス症候群の原因物質の1つであるホルムアルデヒドについては、かなり前から日本でも規制対象となっていました。

ホルムアルデヒドは刺激臭のある無色の気体で、呼吸器や目、喉などの炎症を引き起こします。発癌性があるともいわれるんで、とっても危険!

1975年に「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」が制定されて、幼児が使用する衣類や家具などからホルムアルデヒドが出ないように規制されました。

2003年に改正された建築基準法では、ホルムアルデヒドに加えて、殺虫剤にも使われるクロルピリホスも規制されています。

ただ、これら2つの化学物質以外は建築基準法の規制が及ばないため、シックハウス症候群の予防という点では、まだまだ法制度が追い付いていないってのが現状です。

まあいっか
まあいっか

クロルピリホスを吸い込むと、息苦しさやめまいを感じて、発汗や痙攣などが起こることもある。目の充血や痛みの原因にもなるし、ひどい場合だと意識を失うこともあるんだ。

ぼっちだこ
ぼっちだこ

クロルピリホスを160℃以上に加熱すると、塩化水素やリン酸化物などの有毒ガスを発生するっていうから恐ろしい。中国産のホウレンソウやマツタケから、基準値を超える量のクロルピリホスが検出されて話題となったのは記憶に新しいよね。

まあいっか
まあいっか

いくら住環境の化学物質を気を付けていても、口から入る食品に多量の化学物質が含まれていたんじゃ話にならない。中国製の衣類から有害物質が検出されることもあるから、衣食住の衣や食にも気をつけないと、体調不良がシックハウス症候群なのかどうかもわからなくなっちゃうな。

裁判所が売主の過失を認めて不法行為責任を肯定した

法制度的に扱いがビミョーなシックハウス症候群や化学物質過敏症ですが、化学物質と健康被害との因果関係を証明できれば、シックハウス付きの家や部屋を提供した売主に対して、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能です。

損害賠償請求訴訟を起こす場合、原因物質の特定が先決。室内の空気を測定する方法には、簡易測定や精密測定、吸引方式・拡散方式などがあります。

専門の機関に依頼して、適切な方法で測定してもらってくださいね。自治体によっては保健所が無料で測定してくれることもあるので、お近くの保健所に相談してみるのもいいでしょう。

次に、医師の診断書が必要です。売り主側から「いいかげんな診断書だ!」と突っ込まれないように、シックハウス症候群や化学物質過敏症の診療科がある病院やクリニックでの受診をお勧めします。

さて、準備をして売主を訴えると、裁判所はどんな判決を下すんでしょうか?

以前はシックハウス症候群(化学物質過敏症)訴訟は、ことごとく被害者(原告)が敗訴していました。しかし、平成21年10月1日、東京地裁は次のように判断して、新築マンションの一室を原告に販売した売主に約3600万円の賠償金支払いを命じました。

化学物質過敏症については、未解明の部分が多いことから因果関係についての自然科学的証明がされているとは言えない。しかし、X(注:原告)が化学物質過敏症の原因物質と接近していること(場所的要因)、Xの生活環境等から見て他に同様の症状を生じさせるような要因は見当たらないことから、本件専有部分からホルムアルデヒドが拡散されていたこととXの罹患した化学物質過敏症との間には法律上の因果関係が存在すると認めることができる。

初めて裁判所が売主の過失を認め、不法行為責任を肯定したって意味で、とても画期的な判例です!

シックハウス症候群訴訟の一番のネックは、自然科学的に因果関係を証明しづらいことです。しかし、将来的に化学物質の人体への影響が明らかになるつれて、東京地裁平成21年10月1日判決のような判例も増えていくんじゃないでしょうか?

シックハウス症候群(化学物質過敏症)の被害者は、泣き寝入りするんじゃなくて、売主の不法行為責任を追及するといいでしょう。

化学物質が充満した部屋から引っ越さないとヤバいかも

相談者のケースでは、不動産屋を訴えるにしても何にしても、まずは今いる部屋から出ましょう。旦那さんも症状が現れ始めているみたいですから、そのまま住み続けるとかな~りヤバいことになりそう……

とりあえず仮住まいを探して引っ越すなら、日本全国の賃貸物件を掲載している「キャッシュバック賃貸」が便利です。最大10万円の引越し祝い金ももらえるのが嬉しいですね。

化学物質が充満していない部屋で、改めて冷静に何をどうすべきか、戦略を考えることをお勧めします!

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