お墓が家の近くにできるなんて嫌!墓地の経営許可の取消しを求めたい

お墓が家の近くにできるなんて嫌!墓地の経営許可の取消しを求めたい 不動産
相談者
相談者

私の家は田んぼや畑の近くにあります。

数か月前、家から200メートルくらい離れたところにある田んぼが埋め立てられたんですが、なんと、そこにお墓ができるって話じゃないですか!家から見える場所にお墓があるなんて、気持ち悪いし、怖いし……。そして、私の住んでいる土地の地価も下がる気がするんですよ。

お墓ができるのを阻止したいんですが、何とかなりませんか?

家の近くに墓地ができるとなったら、相談者のように不快に思う人は多いでしょう。そんな人たちは、「お墓を作るな!」と訴えることはできるんでしょうか?

嫌悪施設の建設や経営は法律や条例で規制されている

墓地は一般的に「嫌悪施設(けんおしせつ)」と考えられます。

嫌悪施設とは、ゴミ処理場や刑務所、火薬保管庫など、怖い・汚い・危険な施設に加えて、治安の悪化につながるような店や公害が発生しそうな施設なども含まれます。

嫌悪施設がそこら辺にポンポンできちゃうと住人が困るので、多くの場合、法律で規制されています。墓地の経営に関しては、墓地、埋葬等に関する法律10条1項で、都道府県知事の許可を得ることが義務付けられているんですね。

また、地方自治体によっては「墓地等の経営の許可等に関する条例」のような条例があって、墓地、埋葬等に関する法律よりも具体的で細かい規制がなされていることもあります。たとえば、横浜市墓地等の経営の許可等に関する条例9条では、次のように定められています。

墓地の設置場所は、当該墓地が専ら焼骨のみを埋蔵するものである場合を除き、学校、公園又は住宅の敷地から墓地の敷地の境界線までの水平距離が110メートル以上であり、公衆衛生上支障がない土地でなければならない。

「110メートル以上」という制限があるので、「我が家に隣接する土地にいきなり墓地ができちゃった!」ってことにはならないはず。もっとも、「当該墓地が専ら焼骨のみを埋蔵するものである場合を除き」と書かれているので、現代風のオシャレな納骨堂が家の真後ろにできるってことはあり得るかもしれません。

横浜市墓地等の経営の許可等に関する条例のような条例があれば、それを根拠に墓地経営の取消しを求められそうな気もしますが……。実際のところはどうなんでしょうか?

墓埋法に近隣住民の個別的利益を保護する目的はない

大阪府に住むXは、家の近くに墓地が設置されることに納得できませんでした。そこで、墓地、埋葬等に関する法律10条1項を根拠として、大阪府知事のした墓地の経営許可の取消しを求める訴訟を起こしました。

当時、大阪府墓地等の経営の許可等に関する条例7条1号では、「住宅、学校、病院、事務所、店舗その他これらに類する施設の敷地から三百メートル以上離れていること」と定められていました。そのため、Xは「我が家から300メートルに満たない場所にお墓を作るな!」と主張したんですが……。

最高裁は平成12年3月17日に、次のように述べてXの訴えを退けました。(全文はこちら

法(注:墓地、埋葬等に関する法律)一〇条一項自体が当該墓地等の周辺に居住する者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。(中略)したがって、【要旨】墓地から三〇〇メートルに満たない地域に敷地がある住宅等に居住する者が法一〇条一項に基づいて大阪府知事のした墓地の経営許可の取消しを求める原告適格を有するものということはできない。

Xに原告適格が無いなんて、ずいぶん乱暴な論理じゃないですか!?

原告適格とは、行政事件訴訟で、原告として裁判所に訴えることができる資格のことです。

最高裁は、Xの原告適格を否定して、「そもそもあんたに訴える資格はないからね!」と言って門前払いしちゃったんです。Xは、墓地の設置が条例違反に当たるから訴えたのに……。

もっとも、大阪府墓地等の経営の許可等に関する条例7条1号には、「ただし、知事が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない」という但書があったので、最高裁もどうやら「公共の福祉」を優先したっぽいです。そんな雰囲気が判決文から読み取れませんか?

墓地は、ゴミ焼却場や原子力発電所のような施設とは違って、汚いとか危険とかいうわけじゃなく、「何となく気持ち悪い」という心理的な側面が強い施設です。だから、社会全体の利益である公共の福祉と天秤にかけられると、どうしても公共の福祉に傾いちゃうんでしょうね。

取消訴訟の原告適格が拡大されても近隣住民は敗訴する

平成16年に行政事件訴訟法が改正されて、取消訴訟の原告適格が拡大されました。これによって、法令の文言の解釈だけでなく、法令の趣旨・目的や行政処分から生じる利益の内容・性質なども考慮されることになりました。

こうした経緯から、墓地の経営許可の取消を求める原告適格を認める下級審判例も登場しました。東京都練馬区で起こった墓地経営許可処分取消請求事件の東京地裁平成22年4月16日判決です。(詳細はこちら

しかし、いくら原告適格が認められたところで、裁判所は原告の訴えをことごとく否定。結局原告は全面敗訴しちゃってるんで、墓地の経営許可の取消しを近隣住民が請求しても、やっぱり勝ち目はなさそうです。残念。

お墓が家の近くにあるのがそんなに嫌ですか?

相談者のケースでは、たとえ条例違反があったとしても、おそらく訴訟を起こしても敗訴するだけでしょう。訴訟にかかるお金と時間と労力を考えたら、お墓が家の近くにできることを我慢した方がいいんじゃないでしょうか?

これ以降はぼっちだこの私見ですが、お墓が家の近くにあることって、そんなに悪い条件ですかね?

日差しを遮る高層マンションや騒音・渋滞の原因になるショッピングモール、救急車がサイレンを鳴らしながら夜中に急患を運んでくる病院などが建つよりも、お墓の方がよっぽどいいような気がするんですが、いかがでしょうか?

家の前がお墓ならば、静かだし、日当たりや風通しもいいし、良いことづくめだと思うんですよ。私が土地を買うなら、むしろお墓の近くを買いたいくらいです。幽霊なんて出ませんよ(笑)

それに、田んぼが埋め立てられてお墓ができたってことは、これからその周辺も埋め立てられて、住宅街などになる可能性があります。そうなれば地価も上がるはず!

要は気持ちの問題です。お墓が家の近くにできることを「嫌だ」と思っている限り、ストレスはたまる一方です。でも、「お墓ができてラッキー!」と思えれば、その後の住生活はもっと楽しいものになりますよ。

最後に、これは相談者に向けてではなく、これから墓地を購入する予定の人たちへのアドバイスです。

墓地を購入する際は、その墓地の経営者が近隣住民とトラブルを起こしていないかを調べておくといいでしょう。

もし大阪府や東京都練馬区の訴訟のような訴訟が起こっていたら、敗訴に不満のある住人に嫌がらせされるかもしれません。墓石を壊されたり、お供え物にイタズラされたり……。

そんなことにならないためにも事前調査をしっかり行うことが大切です。

まあいっか
まあいっか

2017年7月、神奈川県南足柄市の大雄山最乗寺の墓地で、墓石約15基が倒される事件が起こったよね。器物損壊の容疑で逮捕されたのは80歳のじいさんだったからビックリ!

ぼっちだこ
ぼっちだこ

同年6月下旬にも、約30基の墓石が倒される被害があっているから、このじいさん、もしかしたら“お墓倒しの名人”だったのかも……。それにしても、何が目的で墓石を倒したんだろう?謎は深まるばかりだ。

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