私のご先祖様が眠るお墓がある場所は、もともとA村が運営する共同墓地でした。だから、納骨の方法などについてうるさく言われることもなかったんですよ。
でも、A村が他の村と合併してB町となった一昨年、共同墓地の管理がY寺に移ってしまい、これが地獄の始まりでした。
Y寺が「檀家(だんか)になれ!」としつこいんです。私がそれを拒むと、Y寺は「檀家でない者は墓地を使用するな!墓石を撤去して墓地を明け渡せ!」と言います。こんな状況なので、昨年亡くなった私の母も納骨できないまま……。
私はY寺の檀家になるか、墓地を明け渡すか、どちらかを選ばなければならないんでしょうか?
墓地の永代使用権をめぐるトラブルですね。霊園の管理者が変更になった場合、墓地使用権がどうなるのかが問題になっています。
実は、同様の事件について最高裁はどのような判決を下しているのでしょうか?
そもそも檀家制度って何なの?
檀家制度とは、「檀家」と呼ばれる個人が、特定のお寺に葬祭供養を全てお願いする代わりに、そのお寺に対して経済的な支援(維持費やお布施など)を行うことをいいます。こうした制度で成り立っているお寺が「檀那寺(だんなでら)」です。
江戸時代、幕府がキリスト教弾圧と抱き合わせで作った寺請(てらうけ)制度。それが現代でも生き残っているんですね。
檀那寺はいろいろ御託を並べるでしょうが、要はこの制度、檀那寺の大切な収入源なんですよ。檀家がいれば、何もしなくたって勝手にお金が入ってくるわけですから、こんなにオイシイ制度はありません。だから、檀家が増えるのは大歓迎、逆に「檀家を辞める」なんて言おうものなら……。
檀家を辞めることは「離檀(りだん)」といいます。離檀するときに檀那寺から高額の離檀料を請求されたっていうトラブルも最近はよく耳にします。お寺も経営がかかっているから、なりふり構っていられないってわけ。仏教の堕落ですよ、ホント!
離檀するとお墓も引っ越さなければならないことがほとんどです。だから、新たにお墓を建てる場合は、「家から近いから」などのいーかげんな理由じゃなくて、「檀家になる必要があるのかどうか?」というポイントをチェックして墓地を選びましょう。
AERA dot.で紹介されてたけど、埼玉県熊谷市にある曹洞宗の見性院(けんしょういん)では、橋本英樹(えいじゅ)住職が檀家制度を廃止したっていうよ。その効果で、なんと収入が4倍になったんだって!
橋本住職は、お布施の額を従来の半額以下にして、「何に対していくら支払うのか?」を明確にした。お寺や僧侶の役割を「サービス業」と位置付けて、経営的な視点を導入したんだね。
他のお寺からパッシングされたり、元檀家からの批判もあったりするみたいだ。従来のやり方を変えて新しいことを始めると、風当たりが強くなるのはよくあること。橋本住職には頑張ってもらいたいな!
遺骨を郵送で受け付ける「送骨サービス」っていう斬新なアイデアも光ってるね。アマゾンの僧侶派遣サービス「お坊さん便」にも協力してるし、これからもっともっと伸びていくんじゃないかな?
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墓地の管理者が変わるとどうなる?
墓地にお墓を建てるのは、土地を買って家を建てるのとはちょっと違います。墓地を使用する権利は「永代使用権(えいたいしようけん)」と呼ばれ、その土地を自分のものにする所有権ではありません。
永代使用権の設定された墓地は、自分の土地じゃないので、他人に貸したり譲渡したりできません。
そして、墓地の管理者であるお寺に管理費を支払わなかったり、離檀したりすると、「墓石を撤去して墓地を明け渡せ!」と言われちゃうわけです。
こういうルールについては、墓地の永代使用権を購入する際にきちんと確認しておく必要があります。
とはいえ、相談者のケースのように、墓地の管理者が途中からお寺に変わった場合、そのお寺は「檀家でない者は墓地を使用するな!」なんて言えるのでしょうか?
同様の事件について、最高裁は平成8年10月29日に次のように述べています。(全文はこちら)
上告人(注:お寺)は右墓地使用権設定契約上の地位を承継したものというべきであるから、本件墓地が上告人の寺院墓地という性格を有するに至ったとしても、同被上告人ら(注:墓地使用者)は、従前どおり本件墓地において自己の属する宗派の方式によって典礼を行うことを妨げられないものと解するのが相当である。
旧岩手郡a村(現盛岡市)から委託を受けたDたちが管理していた共同墓地がありました。当時は、宗派を問わず埋葬することが認められていました。しかし、共同墓地の管理を引き継いだ真言宗のお寺(上告人)が、「多宗派の方式で埋葬することは許さん!」と言い始めたんですね。
困った墓地使用者たちが裁判所に訴えたんですが、揉めに揉めて……。で、最高裁は「墓地を昔から使用している人たちを尊重しろ!」と言って、お寺側の上告を却下しました。お寺が管理する前から墓地を使用していた人たちに対して、お寺は「自分たちのやり方に従え!」とは言えないってことです。
「宗教不問」で墓地を探してみよう!
最高裁の判例に従えば、相談者のケースでは、Y寺の言うことに従う必要はなさそうです。いろいろ文句を言われる場合は、「最高裁の判例もありますし、何なら弁護士を通してお話ししましょうか?」とでも返しておけば十分でしょう。金の亡者と化したお寺の要求は突っぱねてOK!
もっとも、今回紹介した最高裁判例は、墓地の管理者が変更になったという特殊なケースについてのみ当てはまります。それ以外のケースでは別の結論になるので注意が必要です。詳細は、以下の記事を参照してください。