詐欺の手口をサイトで暴露!名誉毀損で訴えると言われたらどうする?

詐欺の手口をサイトで暴露!名誉毀損で訴えると言われたらどうする? ネットトラブル
相談者
相談者

2年前、私は、カモネギ出版社主催の「カモネギ新人文学賞」に小説を応募しました。結果は落選だったものの、カモネギ出版社から「あなたの作品は可能性があります。共同出版という形で本にしませんか?」と誘われ、作品をべた褒めされた嬉しさから、200万円の共同出版契約を結んじゃいました。

でも、これは詐欺だったんです。カモネギ出版社の対応の酷いことといったら……。カモネギ出版社には何度も抗議したんですが何も解決せず、頭にきた私は「自費出版詐欺情報紹介サイト」というサイトを立ち上げて、カモネギ出版社の悪質な手口を詳細に暴露しました。これ以上被害者を増やしたくなかったからです。

そうしたら、カモネギ出版社が、私のサイトが名誉毀損に当たるとして訴訟を起こしたんですよ。詐欺会社の訴えは悪質な脅迫行為だと思うのですが……。

こんな嫌がらせをしてくるカモネギ出版社を逆に訴えられないんですか?

ネット上には、詐欺っぽい「共同出版」や「自費出版」を批判するサイトがたくさんあります。そうしたサイトは、批判の的となっている出版社からすれば、営業妨害もいいところ。中には、名誉毀損を理由に訴訟を起こす出版社があるかもしれません。

しかし、「自分の本を出版したい」という人たちの夢を食い物にする出版社が、自らの汚いやり口を批判されたからといって訴えることは、そもそも許されるんでしょうか?

自費出版や共同出版が「詐欺」といわれる理由

著者が自ら費用を負担して出版することを自費出版といいます。一方、出版社が費用を全額負担することは企画出版といいます。自費出版と企画出版の中間に位置するとされる共同出版では、建前上「著者と出版社とで費用を負担する」ことになっていますが、本当に出版社が費用負担しているのかどうかは怪しいところです。

悪質な出版社は新人賞を運営し、そこに集まった作家志望者たちに営業をかけていきます。出版社から「今回は落選でしたが、大きな可能性を秘めた作品でした。ぜひ共同出版で!」な~んて言われた作家志望者たちは、「印税生活も夢じゃないかも!?」と妄想を膨らませて、あれよあれよという間に何百万の契約を結んじゃうんですね。

契約前は熱心に電話してきた出版社が、契約後は音沙汰無し。出版までに時間がかかり過ぎ。ようやく出版されても、書店に並ぶ冊数はごくわずか。バカ高い流通手数料や在庫管理費。挙句、「版権は弊社に帰属するので、原稿をお返しできません」って……。おい、ふざけんなよ!?

……という感じの「詐欺被害」がいろんなサイトでまとめられています。最近は「自費出版」といっても、電子書籍で出版できたり、Amazonだけに流通させたりと、費用を安く抑える出版方法が多くなってきて、従来の詐欺的な手口はだいぶ減ったようです。しかし、悪質な出版社の黒歴史は、いつまでもネット上に残り続けます。

名誉毀損の訴えが不法行為とされることもある

相談者のケースのように、特定の企業を名指しで批判するサイトは、その企業からすれば「名誉毀損」になるでしょう。社会的評価を下げられて迷惑を被りますからね。

一方、サイト運営者は、公共(=みんなのため)の利害に関する情報を公益(=みんなの利益)目的で発信したと考えられます。こういう場合、次のいずれかに当たれば、情報発信が名誉毀損にならないとされます。

  • 情報の内容が真実である。(真実性)
  • 真実であると信じるだけの相当の理由があった。(相当性)

そして、情報の内容が真実である場合、そのことを自ら知っている者が起こした名誉毀損の訴えは、不法行為とみなされる可能性があるんですね。

もっとも、情報発信者が真実であると信じていただけの場合、その「真実」自体が争いになるので、名誉毀損の訴え自体が不法行為とされることはなさそうです。

この点、最高裁は昭和63年1月26日判決で次のように述べています。(全文はこちら

訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。

名誉毀損を巡る裁判の判決ではありませんが、裁判所の立場がよくわかる判例だと思います。

実際、名誉毀損を理由に提起された訴えが不法行為とされた事例があります。

平成29年に完全消滅したサラ金会社、武富士が、『武富士の闇を暴く』という本を出版した著者と出版社を名誉毀損で訴えたんですね。これに対して、著者たちは、武富士の訴え自体が不法行為であるとして損害賠償を求めて応戦!

東京地方裁判所は「請求が認容される余地のないことを知悉しながら、あえて、批判的言論を抑圧する目的で行われたものであり、裁判制度の趣旨目的に照らして不相当なものというべきであり、違法な提訴である」と述べて、武富士の訴えが不法行為であると判断しました。(詳細はこちら

 

まあいっか
まあいっか

『武富士の闇を暴く』は、借金返済に苦しんでいる消費者目線の本ではなく、会社の内情や過酷な取り立ての手口などを暴露した本なんだ。元社員への取材などもあって、超絶ブラック企業の恐ろしさを垣間見ることができる名著だよ。

武富士の闇を暴く―悪質商法の実態と対処法

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ぼっちだこ
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武富士は、政治家や官僚に根回ししたり、マスコミを利用して大々的に宣伝したり、“ヤ”のつくご職業の方々にも助っ人を頼んだりするなど、あらゆる手段を駆使して拡大していった。

しかし、武井保雄元会長がジャーナリスト宅盗聴事件に関与した疑いで逮捕され、電気通信事業法違反で有罪判決を受けると、状況は一転。政治家やマスコミからも見放された武富士はあっという間に没落し、最終的には倒産してしまったんだ。

名誉毀損トラブルに詳しい弁護士に相談しよう

相談者のケースでは、既に訴えられているので、裁判の場で争うしかないでしょう。

となれば、今後どうすべきかを自分で考えるよりも、弁護士に相談して戦略を練った方が賢明です。法律関連のトラブルを解決できる専門家を全国1,000以上の登録事務所から案内する「相談さぽーと」を利用して、名誉毀損トラブルに詳しい弁護士に相談しましょう。

腕のいい弁護士を雇えれば、カモネギ出版社からがっぽり賠償金を徴収して、共同出版詐欺で失った200万円を埋め合わせられるかもしれませんよ!

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