セクハラ発言は就業規則違反?気持ち悪い上司は懲戒処分になるの?

セクハラ発言は就業規則違反?気持ち悪い上司は懲戒処分になるの? 会社
相談者
相談者

私は、現在28歳の女性です。

昨年4月から、派遣社員として大手企業で事務の仕事をしています。職場の雰囲気は良く、正社員の方々は派遣社員の私にもとても親切です。

ただ、A次長だけはどうしても苦手……いえ、生理的に受け付けません。A次長は、私に好意があるのか、「君に入れてもらったお茶を飲んでいると、男として元気になれるよ」とか、「10年くらい前に不倫した女性が君とそっくりで……」とか、いつも気持ち悪いことを言ってくるんですよ。

でも、派遣社員の私は口答えもできず、いつも笑顔で流していますが、もう耐えられません。職場では「セクハラ禁止」がルールとなっているのに、A次長だけがこんな感じで……。

私はどうすればいいのでしょうか?

典型的なセクハラ問題ですね。

しかし、男尊女卑のオジサマ方は、今も「女は男に遠慮するものだ!」なんてのたまうかもしれません。そうでなくとも、社内でのトラブルを嫌がる上司だと、「君が我慢すればいいことだよね?」とごまかしたり……。

そんな上司に囲まれているセクハラ被害者はどうすべきでしょうか?

女性が黙っていても、セクハラはセクハラ

大阪市港区の水族館「海遊館」で、課長代理だった40代男性2人が派遣社員の女性2人にセクハラ発言を連発。不快感を抱いた女性が水族館に訴えたたため、この男性たちは出勤停止と降格の懲戒処分を受けました。しかし、素直に反省できない男性2人は「懲戒処分が重すぎる!」と言って裁判を起こしたんですね。

1審では男性側の訴えが棄却されましたが、2審では男性側が逆転勝訴。下級審で判断の分かれていたセクハラ訴訟に対して、最高裁は次のように述べて、男性2人のセクハラを断罪しました。(全文はこちら

(前略)職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや、上記(1)のような本件各行為の内容(注:男性2人のセクハラの具体的な内容)等に照らせば、仮に上記のような事情があったとしても、そのことをもって被上告人ら(注:セクハラをした男性2人)に有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである。

判例のどの部分をピックアップするかは人それぞれですが、私はこの部分がとても大切だと思っています。

2審は、被害女性が男性たちに抗議したり、会社に訴えたりしなかった事実をふまえて、男性たちへの懲戒処分が重すぎると判断しました。

一方、最高裁は、「女性社員が黙っているからって、セクハラの罪が軽くなるわけじゃない!」と言って2審判決を覆しました。(「しんしゃく」は「斟酌」と書き、事情をくんで許すという意味です)

最高裁の判断は真っ当じゃないでしょうか?

セクハラに対する制裁の根拠は就業規則

男性2人に対する懲戒処分の根拠は海遊館の就業規則にあります。

就業規則の4条(5)では、「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」が社員の禁止行為の一つとされています。また、46条1項では、就業規則に違反した社員に対して、戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇のいずれかの懲戒処分を行うとあります。さらに、46条の3では、社員が「会社の就業規則などに定める服務規律にしばしば違反したとき」は、上告人の判断で減給や出勤停止にすることが明記されています。

海遊館は、セクハラを「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」であると認定して、男性2人を出勤停止と降格の懲戒処分にしました。セクハラに対する制裁の軽重は、就業規則に何と書かれているかに依存するってことです。

昨今の風潮として、セクハラやパワハラ、職場内いじめ、飲酒運転など、モラルに反する行為に対して就業規則を厳格に適用する企業が増えている印象です。

モラルの維持は企業イメージにも直結します。だからこそ、最近は、どの企業もピリピリしているんでしょうね。

海遊館は、従業員の過半数が女性で、水族館への来館者も約6割が女性です。そのため、平成22年11月には、「セクシュアルハラスメントは許しません!!」と題する文書を従業員に配布するなど、セクハラ防止には特に力を入れていました。

そんな状況下で、男性2人は、セクハラ防止でリーダーシップを発揮すべき役職に就いていたにもかかわらず、女性社員と2人っきりのときを狙って嫌らしいことを言ったんですよ。しかも、それを1年以上繰り返すという悪質さ!懲戒解雇にならなかっただけでもラッキーなのに、会社を恨んで訴訟まで起こすなんて……。恥知らずもいいところです。

セクハラで困ったら、まずは就業規則を熟読すべし

セクハラからで困っている女性社員の皆さんは、まずは就業規則を熟読することから始めるといいですよ。海遊館の就業規則に記載されているようなことが書いてあれば、それを根拠にして「私を助けてください!」と会社に訴えましょう。セクハラ問題を解決してくれそうにもない直属の上司ではなく、それよりも偉い人に相談すると効果的です。

最近は国民のセクハラに対する批判も強まっているので、会社も対応してくれるでしょう。セクハラ上司が懲戒処分になることも十分あり得ます。

ということは、会社に直接訴えなくても、セクハラ上司に対して「海遊館の判例もあるんですけど、あなたのやってることは大丈夫ですか?」と脅す注意するだけでも効果がありそうですね。

それでもセクハラが改善されなかったら?

セクハラすら解決できない会社に明るい未来はありません。そんな会社にはとっとと見切りをつけて退職しましょう。まずは、有休消化・残業代などの未払い賃金・退職金回収も任せられる「弁護士法人みやびの退職代行サービス」を利用して、有利な条件で退職することが大切です。

次に、転職サイト「DYM就職」を利用して優良企業に転職しましょう!

まあいっか
まあいっか

日本って、財務省の事務次官がセクハラ辞任したにもかかわらず、「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」という答弁書を閣議決定するくらいのセクハラ大国だよね。こんな国でセクハラと戦うのは大変じゃないかな?

ぼっちだこ
ぼっちだこ

確かに、被害者が声を上げるのはハードルが高い。でも、そういう声に裁判所が応えてくれると分かった以上、これからはセクハラ訴訟が増えるだろうね。

まあいっか
まあいっか

2017年には#Me Too運動が世界中に広がって、セクハラ問題は深刻な人権問題と考えられるようになった。#Me Too運動がいまいち盛り上がらない日本だけど、いずれその流れに巻き込まれていくんだろうな……。

ぼっちだこ
ぼっちだこ

国会で野党が#Me Too運動を行ったせいで、逆に#Me Too運動への不信感を国民に植え付けてしまった気もする。こうしたパフォーマンスではなく、本当に苦しんでいる人たちが戦うことで、世の中が変わるんじゃないかな?

判例が積み重なっていけば、法整備が進んで、そのうち「セクハラ罪」が制定されるかもしれない。

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