過払金返還請求の消滅時効はいつから?借金返済後にお金を取り戻そう

過払い金返還請求の消滅時効はいつから?借金地獄脱出後にすべきこと 金銭トラブル
相談者
相談者

私は20年前からずっと、サラ金会社のA社から借金しては返して、借金しては返して……を繰り返してました。

でも、そんな借金地獄から1週間前にようやく解放されました。事情があって大金が入ったので、これまでの借金をぜ~んぶ返済したんですよ!本当にスッキリしました!これからはもう絶対に借金しないつもりです。

というわけで、清々しい気分にひたっていたんですが、ふと思い立って、自分がこれまでいくら借りて、いくら返済したのかを計算してみました。すると、なんと、30万円も多く返済してたじゃないですか!?前の借金の返済で払い過ぎた分は次の借金返済に充てるってことでA社と契約書を交わしてましたが、それにしても、私は払い過ぎてました。だから、A社に「払い過ぎた分を返してください」って問い合わせたら、A社は「時効なのでそれはできません」と言ってきて……。

払い過ぎた30万円は、本当に時効で戻ってこないんでしょうか?

近年、グレーゾーン金利による過払金が発生して社会問題にもなっています。

過払金返還請求したい!債権譲渡で借金が別の会社に移転していたら?
グレーゾーン金利によって発生した過払い金を返してもらおうと思ったら、お金を借りた会社が債権譲渡していて……。そんな場合はどうすればいいの?

そして、相談者のように過払金があることに気づいたはいいものの、サラ金会社からは「時効だから変換できません」と言われるトラブルもちらほら……。このようなケースでは、過払金の返還請求はできないのでしょうか?

不当利得返還請求権は10年で時効消滅する

サラ金会社への過払金返還請求の法的根拠は、不当利得の返還義務を定めた民法703条です。

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

契約が無効だったり取り消されたりした場合、既に支払われてしまった代金が不当利得です。

たとえば、XはYから中古車を買うために100万円を前払いしましたが、実はその中古車が走行不能のポンコツだったので、Xは瑕疵担保責任(民法570条)に基づいて契約解除しました。そうするとYの手元には100万円が残るので、Xは「前払いした100万円を返せ!」とYに請求できます。これは不当利得返還請求なんですよ。

グレーゾーン金利についても不当利得返還請求の対象になるというのが最高裁の判断です。

ただし、不当利得返還請求権は債権なので、民法167条1項に定められている通り、10年間権利を行使しないと時効で消滅します。返還請求ができる時点から10年間何もせずにいると、いつの間にか「過払金を返せ!」って言えなくなるんですよ。

で、どの時点から時効が進行するのかが問題となります。一般的には、法律上の障害が無くなった時点からと考えられます。

「法律上の障害が無くなった時点」というのは、たとえば「お金を返しなさい」「賠償金を支払いなさい」などと言えるようになった時点のことです。一方で、「請求を忘れていた」「忙しくて請求できなかった」「病気で寝込んでいた」など、債務者側の事情は法律上の障害にはならないので要注意!

では、相談者のように、「過払金を次の借金の返済に回す」という契約内容になっていた場合、どの時点で「法律上の障害が無くなった」といえるんでしょうか?

過払金充当合意がある借金の消滅時効はいつから?

実際、相談者と同じように、昭和57年8月10日から平成17年3月2日にかけて、Y(被上告人)がX(上告人)から借金しては返して……をくり返していました。契約内容には、過払金はその後の借金返済に充てるという合意(過払金充当合意)があったんですね。

そんな借金地獄が終わった後、YはXに「過払金を返せ!」と言いましたが、Xは「時効だから無理!」と突っぱねて、裁判にまでなっちゃいました。

これに対して最高裁は平成21年1月22日の判決で次のように述べました。(全文はこちら

借主は、基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので、一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ、その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが、それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは、借主に対し、過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく、過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから、そのように解することはできない(中略)。
したがって、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。

過払金充当合意がある借金では、金の貸し借りが完全に終わってから時効スタートですよ」ってこと。

フツーに考えて、金の貸し借りの最中に、借主が貸主に「とりあえず過払金を返してください」なんて言わないですし、そういうことを言ったらそもそも過払金充当合意の意味が無くなります。

最高裁は常識的な判断をして、サラ金会社による時効の主張を退けました。

まあいっか
まあいっか

時効が中断させる方法は、民法147条に請求、民事執行(差押え・仮差押・仮処分)、承認の3つが定められている。承認は、時効を主張できる者が「時効を考えなくて結構です」などと言うことだ。一方、請求と民事執行は裁判を起こさないといけない。

ぼっちだこ
ぼっちだこ

そうだね。だから、過払金充当合意のような特殊事情がない限り、早めに不当利得返還請求権を行使しないと、いつの間にか過払金を取り返せなくなっちゃうんだ。

「時効」を主張されても過払金返還請求をしよう!

相談者のケースは判例のケースとほぼ同じです。だから、相談者はA社に「払い過ぎた分を返してください」と強く迫っても大丈夫です。というか、30万円も過払金があるなら、「A社が『時効だ』って言うから」と引き下がっちゃいけません!

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