迷惑な不法投棄ですが、ゴミを出した会社が分かっているなら、問題は簡単に解決しそうなものです。しかし、今回のように「うちは関係ない」を通そうとする会社が相手の場合、本当に「関係ない」となって、土地所有者は泣き寝入りすることになるんでしょうか?
ゴミ処理の責任はゴミを出した会社にある
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の3条1項には次のように書かれています。
事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
ゴミを出した会社は「自らの責任において」ゴミを処理する義務があります。だから、たとえ他の業者にごゴミ処理を委託したとしても、その後の流れについて「うちは関係ない」とはいえません。
実際、平成28年には、同志社大学から出たゴミが適切に処理されなかったために、大学職員3名が逮捕されるとなんて事件も起こっています。
学校法人同志社は子会社の「同志社エンタープライズ」にゴミ処理を委託し、同志社エンタープライズは建物管理会社の「コスモスビルメンテナンス」に再委託していました。が、なんと、同志社エンタープライズもコスモスビルメンテナンスも、市の収集運搬業の許可を得ていませんでした!
たかがゴミ。されどゴミ。処理を他人任せにしていたら犯罪になっちゃった、な~んて恐ろしいことが起こり得るんですね。
未必の故意でも共謀共同正犯が成立する
同志社大学のケースは、無許可業者へのゴミ処理委託でした。一方、不法投棄の方はどうなっているんでしょうか?
平成19年1月18日に、最高裁が次のような判決を下しています。(全文はこちら)
今日の判例被告人5名は、Bや実際に処理に当たる者らが、同ドラム缶を不法投棄することを確定的に認識していたわけではないものの、不法投棄に及ぶ可能性を強く認識しながら、それでもやむを得ないと考えてBに処理を委託したというのである。そうすると、被告人5名は、その後Bを介して共犯者により行われた同ドラム缶の不法投棄について、未必の故意による共謀共同正犯の責任を負うというべきである。
物流業者「相模運輸倉庫」が、硫酸ピッチ入りのドラム缶の処理を下請会社「相東運輸」に委託しました。そして、相東運輸は、北海道浦河町の競走馬牧場と美深町の山林に361本のドラム缶を不法投棄しました。
硫酸ピッチは強酸性の有害物質です。触るとやけどしますし、雨水に反応して有毒な亜硫酸ガスを出す危険物です。そんなものを不法投棄されたらたまったものじゃありません。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で捕まった相模運輸倉庫は、「うちは関係ない」と主張しましたが、最高裁は「あんたは『ドラム缶が不法投棄されてもしかたない』と思ってたでしょ?」と言ってその主張を退けました。
未必の故意とは、積極的に「犯罪を行おう」と思ったわけではないけれど、「犯罪が起こっても構わない」と行動することをいいます。
また。共謀共同正犯は、「一緒に悪いことをしようぜ!」と企んだ者たちのうち、実際に悪いことをしなかった者のことです。悪の秘密結社の首領は、手下に行動を指示しますが、自分は何もしません。この首領が共謀共同正犯ってことです。
未必の故意と共謀共同正犯の成立については学説上の争いがありましたが、最高裁は「未必の故意でも共謀共同正犯が成立する」と明言しました。そんな画期的な判決だったんですね。
不法投棄を見つけたら警察に通報しよう
相談者のケースでは、民事訴訟を起こして、Y株式会社にゴミを撤去させることもできるでしょう。しかし、そのためには、弁護士を手配したり、裁判所に提出する書類を作ったりと、お金と時間と労力がかかって面倒です。
なので、上で紹介した判例を見せながら、「とりあえず警察に相談してみます」と言うのが一番です。
Y株式会社が本当に不法投棄していないにしても、「うちは関係ない」と言っているあたり、未必の故意はありそうです。だから、「警察」という言葉に反応するんじゃないですかね?
会社にとっては、刑事事件に巻き込まれることはブランドイメージの低下につながります。Y株式会社は慌ててゴミを回収しに来るかもしれません。
不法投棄は犯罪です。空き缶のポイ捨てくらいでは動かない警察でも、大量の産業廃棄物が捨てられていて、しかも、それらのゴミを出した会社が特定できるならば、捜査をしてくれるはずです。土地所有者が泣き寝入りしてはいけません!
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不法投棄に被害を防ぐ裁量の方法は、空き地を売却してしまうことです!