広告




旅館の料理を食べたら食中毒に!イシガキダイのシガテラ毒は危ないよ

旅館の料理を食べたら食中毒に!イシガキダイのシガテラ毒は危ないよ
相談者
自営業者の私は、先週仕事を休みにして、二泊三日で一人旅をしました。その2日目の夜に泊まった旅館では、夕食にイシガキダイの刺身や煮つけ、揚げ物などがありました。とても美味しくいただいたんですが、その夜、激しい吐き気と下痢に襲われました。しかも、冷たいものに触れると激痛が……。めまいや頭痛もひどく、我慢できずに救急車を呼びましたよ。病院の診断によると、イシガキダイに含まれるシガテラ毒が原因の食中毒だと判明!旅行先で入院することになって2日間仕事できず、これが原因で30万円の損失を被りました。それに、退院後も体の節々が痛くて困っています。そんな状況なので、旅館に賠償金を払ってほしいと伝えたんですが、「イシガキダイで食中毒になると知らなかったので、旅館に責任はない。宿泊費は無料にして見舞金も渡したんだから、これ以上は払えない」という対応でした。「知らなかった」で済まされる問題なんですか?私は泣き寝入りするしかないんでしょうか?

「知らなかった」なんてずいぶんいいかげんな旅館だな、という印象ですね。

しかし、そんな「知らなかった」という言い訳は通用しないでしょう。なぜなら、下級審判例ですが、同様の事件で被害者が勝訴しているからです。

では、実際の事件について見てみましょう。

製造物責任法の立法趣旨を踏まえて被害者を救済

Xたち家族は、Yの経営する割烹料亭で、Yが調理したイシガキダイのアライ、兜の塩焼きなどを食べました。その後、家族がどんどん体調不良に……。

吐き気や下痢、肌のかゆみ、痺れ、体のだるさなどがどんどん出てきちゃったんです。そして、冷たいものに触れるとズキンズキンと激痛が!

Xたちは、イシガキダイに含まれていたシガテラ毒のせいで食中毒になったんですね。そこで、Xは、Yを相手に、製造物責任法3条に基づく損害賠償訴訟を提起しました。

一方、Yは、イシガキダイの調理は製造物責任法の「加工」に当たらないと反論。さらに、「イシガキダイにシガテラ毒があるなんて知らなかった」と言って、製造物責任法4条に定められた「開発危険の抗弁」が成り立つと主張しました。

東京地方裁判所は、平成14年12月13日の判決で次のように述べて、Xの主張を認めました。(全文はこちら

今日の判例被告は、本件イシガキダイという食材に手を加え、客に料理として提供できる程度にこれを調理したものといえるから、このような被告の調理行為は、原材料である本件イシガキダイに人の手を加えて新しい属性ないし価値を加えたものとして、法にいう「加工」に該当するものというべきである。(中略)

被告が原告らに本件料理を提供した当時において、入手可能な最高の科学技術の水準をもってしても、本件料理にシガテラ毒が含まれるとの欠陥があったことを認識することはできなかったことの証明があったものとはいえないし、(中略)既存の文献を調査すれば判明するような事項については開発危険の抗弁が認められる余地はないと解すべきであるから、本件において、法4条による免責を被告に認めることはできないというべきである。

裁判所の判断をざっくり要約すると、「調理は製造物責任法の『加工』だし、シガテラ毒についても調べればわかるので開発危険の抗弁も認めない!」ってこと!

この判決は、製造物責任法の立法趣旨(この法律が作られた理由)をふまえて被害者を救済しました。その立法趣旨については、次で解説しますね。

製造物責任法(PL法)は何のために制定されたの?

製造物責任法(PL法)は、欠陥製品のせいで損害を被った人を救済しやすくする目的で制定されました。

たとえば、テレビが火を噴いたり、スマホで感電したりした場合、大けがしたり家族を失ったりした人は誰に損害賠償請求しますか?

欠陥商品を売った売主の民法の瑕疵担保責任を追及しますか?

そんなことをしても、せいぜい代金を返してくれるくらいですよ。(瑕疵担保責任については「ネットオークションで返品したい!ノークレームノーリターンは有効?」を参照してください)

じゃあ、メーカーに民法の不法行為責任を追及しますか?

そうなると、被害者がメーカーの過失を立証しなければなりませんが……。う~ん、専門的な知識が必要な製造工程について「ここに過失があります!」ってのは、現実的に考えてムリ!

そこで製造物責任法の出番です!

製造物責任法では、被害者は商品の欠陥さえ証明できれば、メーカーの過失を証明しなくてもメーカーに損害賠償請求できます。

そんな製造物責任法について、東京地裁平成14年12月13日判決で問題となった論点を整理しましょう。

「製造又は加工された動産」って何?

製造物責任法の対象は「製造又は加工された動産」です(2条1項)。

動産というのは、土地や建物などの不動産以外のもので、ソフトウェアのような形のないものや、ものの引き渡しの無いサービスには適用されません。

また、「製造又は加工」とあるので、何も手が加えられていない無加工のものにも適用されないんですね。

だから、Yは、イシガキダイの調理は製造物責任法の「加工」に当たらないって主張したんですよ。

Yの論理は、「そもそも原材料であるイシガキダイに問題があったんだから、調理によって危険が生じたわけじゃない!」というもの。

この論理でいくと、原材料に添加物を加えたり腐敗させたりして危険を発生させたような場合以外は「加工」じゃないってことになりますが、裁判所はYの論理を否定しました。

「開発危険の抗弁」って何?

製造物責任法4条は、次のように「開発危険の抗弁」を定めています。

前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。
一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。

この条文の趣旨は、メーカーが委縮しないようにすること。「どこをどうがんばっても防げない欠陥についてはメーカーに責任を負わせないから、メーカーは過度に怯えなくていいよ」という配慮です。

Yは、この条文を根拠に、「イシガキダイのシガテラ毒で食中毒を起こすことはめったにないし、見た目から毒があるかどうかを判断するのは難しい。だから、調理したイシガキダイにシガテラ毒があるなんて知らなかった」と主張したんですね。

でも、そんな主張が通るんなら、全てのメーカーが「知らなかった」って言い始めますよね?

だから、裁判所は「一般人の常識で判断するんじゃなくて、入手可能な最高の科学技術の水準で考えろ!」と述べて、Yの開発危険の抗弁をつっぱねました。

ちなみに現在では、厚生労働省が公式HPで「自然毒のリスクプロファイル:魚類:シガテラ毒」というページを公開し、イシガキダイを食べることの危険性について警告しています。

そのため、「イシガキダイにシガテラ毒があるなんて知らなかった」なんて、今ではもう何の言い訳にもなりませんよ。

シガテラ毒は神経伝達に異常をもたらす危険な毒

シガテラ毒は、神経伝達に異常をもたらす毒の総称です。シガトキシン、スカリトキシン、マイトトキシン、シガテリンなど、20種以上が知られています。

シガテラ毒は熱帯の海に生息するプランクトンが作り出します。そして、このプランクトンを食べた魚の体内に残っちゃいます。

沖縄県が、他の地域よりも多く食中毒が発生しています。最近では、九州や本州でもイシガキダイを原因とする事例が報告されるようになってきました。

シガテラ毒を持っている可能性のある魚は、今回紹介したイシガキダイだけではありません。ウツボのように食用としてはあまり一般的じゃない魚から、ヒラマサやブリ、カマスといったスーパーに並んでいる魚まで、実に400種類以上!

「恐ろしくてお魚を食べられないよー!!」って悲鳴が聞こえてきそうですね(笑)

シガテラ毒の症状は、吐き気や下痢、腹痛などの他、かゆみやしびれ、だるさ、筋肉痛などの神経症状も出てきます。そして、冷たいものに触れたときに激痛が走る「ドライアイス・センセーション」も特徴的な症状です。

1~8時間程度で発症し、回復が非常に遅いのでたちが悪いんですよ。数か月から1年以上も症状が残ることも!

フグ毒のような有名な毒なら誰でも注意しますが、シガテラ毒についてはあまり知られていないため、ついうっかり摂取してしまう危険性があります。釣った魚を調理して食べる釣り人は要注意!

まあいっか
九州や本州のイシガキダイからシガテラ毒が検出されるようになったのは、地球温暖化の影響だと考えられているね。海水の温度が上がって、シガテラ毒を持つ渦鞭毛藻(うずべんもうそう)が海を北上してるっていうから恐ろしい。
ぼっちだこ
地球温暖化が海の生態系の及ぼす影響は深刻だ。たとえば、温暖な海を好むサワラは、九州と瀬戸内海でよく獲れていた。でも、日本海の水温が上昇したので、もっと北の地域でも獲れるようになったんだ。こうした生態系の変化は漁獲量を左右するので、漁師さんたちはとても大変だね。

損害賠償請求の内容については弁護士と要相談

相談者のケースでは、製造物責任法に基づいて旅館を訴えれば勝てると思われます。ただ、損害賠償請求の内容については検討が必要ですね。

治療費や入院費は問題なく請求できるでしょう。一方、「後遺症(体の節々が痛い)についてはいくら請求できるか?」「慰謝料はいくらなのか?」は難しいところです。

また、2日間仕事できなかったために被った30万円の損失については、食中毒との因果関係を証明する必要があります。取引先と既に約束していた仕事の報酬なのか、それとも商談次第で得られたかもしれない報酬なのか?どちらなのかで賠償金の額は変わってくるでしょう。

このあたりは弁護士と相談して訴訟戦略を練っていくといいですよ。

注意当サイト記載の相談事例は全てフィクションです。記事中の相談者は実在せず、記事を作成することにより管理人が報酬を得ているわけではありません。そのため、弁護士法72条に規定される非弁行為には該当しませんので、この点は十分にご理解願います。

実際の法的トラブル解決に関しましては、弁護士などの専門家に必ずご相談ください。法律関連のトラブルを解決できる専門家を全国1,000以上の登録事務所から案内する「相談さぽーと」がとても便利なのでお勧めです。

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク