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サッカーボールが道路に転がり交通事故に!子供の親は監護義務違反?

サッカーボールが道路に転がり交通事故に!子供の親は監護義務違反?
相談者
一週間前、スクーターで小学校の脇にある道路を走っていたら、校庭のフェンスを越えてサッカーボールが飛んできて、私の前に転がってきました。私はそのサッカーボールを避けようとして転倒し、後続車に轢かれてしまいました。幸い命に別状はなかったものの、両足を複雑骨折したため手術を受け、現在も入院中です。スクーターも大破してしまいました。保険会社の人に、車の運転手に損害賠償請求できないか相談しましたが、「4割くらいは過失相殺されますね」と言われました。確かに私が転倒したのが悪いのでそうなるんでしょうが……。納得できません。そもそも事故の原因は、サッカーボールを道路に飛ばした小学生にあります。だったら、その小学生の親にも損害賠償請求できるんじゃないでしょうか?

道路にサッカーボールが転がってきて事故になるというシチュエーションは、交通安全教室などでも定番ですね。

ただ、相談者のケースのように、子どもが事故を引き起こしてしまった場合、その子どもの親の責任はどうなるんでしょうか?

他人に損害を加えた未成年者の親は不法行為責任を問われる

民法712条では、未成年者の責任について、次のように定められています。

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

ここでいう「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていな」い未成年者は、中学1年生くらいまでです。そんな未成年者が他人に損害を与えた場合について、723条1項は次のようにフォローします。

前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

未成年者にとって「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」とは、一般的に親権者である親です。小学生の子どもの行為で損害を被った人は、その子どもの行為が不法行為であることを主張立証するだけです。723条1項但書は、子どもの親が主張立証して初めて効力を発揮するんですね。

一方、他者に損害を与えた未成年者に責任能力がある場合(未成年者が中学生以上の場合)でも、被害者はその未成年者の親の監督義務違反を主張立証して、民法709条に基づいて親に損害賠償請求できることがあります。

いずれにしても、他人に損害を加えた未成年者の親は不法行為責任を問われる可能性大ってわけです。

不法行為法というと、「おまえのせいでひどい目に遭ったんだ!だから、金払え!」という感じで、悪いことをした相手に対するお仕置き的なイメージがあるかもしれません。

しかし、現代日本の不法行為法は、加害者への制裁というよりも、「損害の填補(てんぽ=埋め合わせ)」が目的です。「しつけの成っていない親を罰しよう」というんじゃなくて、お金のない子どもから損害を受けた被害者を救済するため、723条1項は親の賠償責任を定めているんですね。

サッカーボールを校庭の外に蹴り出した子どもの親の責任は?

平成27年4月9日、親の子どもに対する監督責任について争われた裁判、通称「サッカーボール裁判」の最高裁判決が話題となりました。

事件は、判決からさかのぼること11年前。愛媛県今治市の小学校で放課後、当時小学6年生だった少年(11)が、サッカーゴールに向けてフリーキックの練習をしていました。そして、そのボールがポーンと飛んで、フェンスを飛び越えて道路にコロコロ……。

そこを偶然、バイクに乗った男性が通りかかり、ボールを避けようとして転倒。この事故がきっかけで男性はけがをして、その後死亡しました。

平成19年、男性の遺族が約5000万円の賠償金を求めて少年の両親を提訴。1審、2審ともに親の賠償責任を認めましたが、最高裁は次のように述べてこれらの判決を覆しました。(全文はこちら

今日の判例C(中:サッカーボールを蹴り出した少年)の父母である上告人らは、危険な行為に及ばないよう日頃からCに通常のしつけをしていたというのであり、Cの本件における行為について具体的に予見可能であったなどの特別の事情があったこともうかがわれない。そうすると、本件の事実関係に照らせば、上告人らは、民法714条1項の監督義務者としての義務を怠らなかったというべきである。

少年がサッカーボールを校庭の外に蹴り出した事実と男性の死亡との間の因果関係については争われず、少年の両親が少年に対する監督義務を怠ったかどうかについてのみ争われた裁判でした。

最高裁は「両親は少年をきちんとしつけしていたよね」「フリーキックの練習が事故につながることは予見できないよね」と言って、「監督義務を怠らなかった」と判断したんですね。

従来の裁判では、被害者救済を目的に、ほぼ無条件に子どもの親の賠償責任を認めてきました。そうした先例をひっくり返す判例として、賛否両論が巻き起こりました。

サッカーボール裁判の最高裁判例の射程範囲はかなり狭い?

平成27年4月9日の最高裁判決の結論だけをニュースで読んだ私は最初、「えっ、どうして?死亡した男性とその遺族がかわいそう!」と思いました。でも、事件の背景を見ると、最高裁が少年の両親の責任を免除した理由が何となく分かりました。

まず、事件が起こった現場について、当時の状況を見てみましょう。最高裁判例に書かれている情報から状況を再現すると……

サッカーボールが道路に転がり交通事故に!子供の親は監護義務違反?

えっ?これじゃあ、フツーにサッカーボールが校庭の外に飛んで行っちゃうよね?

サッカーボールを蹴り出した子どもの責任がどうこうっていうよりも、こんなショボい設備しかない学校側の責任だよね?

そんなことを思っていましたが、ネットでも私と同様の意見が多いみたいです。「そもそも遺族が訴えるべきは、少年の両親ではなく学校だった」と。

それから、死亡した男性は85歳。そんなご老体にバイクの運転を認めていた遺族にも過失があるんじゃないでしょうか?

しかも、男性は事故がきっかけで認知症を発症して、約1年半後に肺炎で亡くなったって……。う~ん、確かに交通事故がきっかけとはいえ、事故と死亡との因果関係はどうなのよ?

最高裁は事実の審査をしない法律審なので、因果関係については特に判断しませんでしたが、このあたりも首をかしげざるを得ません。

そして何よりも、自分たちの息子の行為を真摯に反省する一方で、息子を守ろうとした両親の姿勢に心打たれるものがあります。少年のお父さんが公表したコメントを読むと、両親の誠実さがひしひしと伝わってきます。

平成27年4月9日の最高裁判決は、さまざまな特殊事情を考慮した上で、先例を破棄してでも「監督義務を怠らなかった」と判断せざるを得なかったんだと思います。逆にいえば、この判例の射程範囲はかなり狭いんじゃないでしょうか?

弁護士などの法律家は「画期的な判例だ」と言っていますが、今後サッカーボール裁判の最高裁判例が適用される交通事故はそう多くないと考えられます。

まあいっか
不法行為法でいう「因果関係」って、どこまでの範囲が含まれるのかな?たとえば、Yが犬と散歩しているとき、その犬が吠えて、これにびっくりしたAが道路に飛び出したら、Aを避けようとした車(運転手B)が反対側の歩道に乗り上げ、そこを歩いていたXを轢いてしまったというケースだと、XはYに損害賠償請求できるのかな?
ぼっちだこ
ややこしい!旧司法試験の過去問にそんな問題があったような……。この例でも、Yがどういう状況で犬を散歩していたかが問題になるんじゃないかな?
まあいっか
「あれ無ければ、これ無し」という条件関係だけに注目すれば、確かにYが犬を散歩していなければ、Xが車に轢かれることもなかった。でも、どんな状況下でもYに責任を負わせるのはおかしい。だから、判例や学説の多数説は相当因果関係説を採用してるんだ。相当因果関係ってのは、「社会通念上相当」と認められる範囲で因果関係を認め、損害賠償の対象となる条件関係を限定することだ。
ぼっちだこ
さっきの例だと、Yがリードをつけずに犬を散歩していた場合、相当因果関係説に立っても、Yに損害賠償請求できそうだ。一方、Aが犬にちょっかいを出したとか、Bがブレーキとアクセルを踏みまちがったとか、そういう事情があれば、Yの責任まで問われないと思うな。結局のところ、実際の裁判になってみないと、どんな判決が出るかはわからない。サッカーボール裁判にしても、同じ事実をもとにしていながら、1審・2審と最高裁とで真逆の結論になった。不法行為事件は、裁判所がどのような結論を出すか予測するのは難しいよね。

誰に対してどのような責任を追及すべきかを考える

相談者のケースでは、サッカーボールが道路に飛んできた理由によって、小学生の親に損害賠償請求して賠償金を得られるかどうかが変わってくるでしょう。

小学生がわざとサッカーボールを校庭の外に蹴り飛ばしたとか、校庭の外でサッカーボールを蹴っていたとか、そういう事情があれば、「親のしつけがなっていない」と判断されるかもしれません。

一方、小学生がフツーにサッカーをしていただけで、しかも校庭を囲うフェンスなどの高さが不十分だった場合は、小学生の親の責任よりも学校側の責任を追及した方がいいでしょう。

きちんと状況を調べて、誰に対してどのような責任を追及すべきかを考える必要があります。もちろん、相談者を轢いた車の運転手の責任が一番重いので、まずは運転手と交渉すべきです。

注意当サイト記載の相談事例は全てフィクションです。記事中の相談者は実在せず、記事を作成することにより管理人が報酬を得ているわけではありません。そのため、弁護士法72条に規定される非弁行為には該当しませんので、この点は十分にご理解願います。

実際の法的トラブル解決に関しましては、弁護士などの専門家に必ずご相談ください。法律関連のトラブルを解決できる専門家を全国1,000以上の登録事務所から案内する「相談さぽーと」がとても便利なのでお勧めです。

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